「のえるー、風邪薬持ってねぇかー?」


「あ、あぶな・・」


冬の寒さが厳しい時に徹夜で任務をしたせいか風邪をひいてしまったスクアーロは


城の中で唯一薬を持っていそうなの部屋を訪ねた。


と思ったら、部屋の中は白い煙が充満していて、小さくの声が聞こえたと思った
ら小さな小瓶が自分のほうへ勢いよく飛んできて・・・





最悪な一日





「あーあ・・・大丈夫スクアーロ」


部屋の入り口で尻餅をついていたスクアーロには声をかける。


どうやら小瓶の中にはいっていた液体を頭からかぶってしまったようで、ふるふる震えていた。


「・・・これなんの薬だっけ?」


は首を傾げながらスクアーロのそばに落ちている小瓶を拾い上げ、


さっと顔を青ざめさせた。


「おい、。なんの薬なんだぁ?」


瓶を見つめたまま固まっているを不思議に思い、スクアーロは立ち上がりながら


に尋ねる。


「・・・誠に申し上げにくいのですが」


目を泳がせ、こほんと小さく咳払いをしたかと思えば小瓶をスクアーロに見せて


「調合ミスの得体の知れない薬です」


と言った。


小瓶にはドクロのラベルが張ってあって、小さく危険と書いてある。


「おい・・・だったらそれをかぶった俺はどうなるんだぁ?」


「・・・さぁ?」


本当に知らないようで、は顔を背け冷や汗をかいている。


「まさかハゲるとかじゃねぇよな?」


「・・・ハゲたらどうしよう」


のその一言で俺は風邪を引いているにもかかわらず風呂場にダッシュした。


「あ、スクアーロ!」


慌ててスクアーロを追いかけようとしたは自分の目を疑った。


走っていくスクアーロの頭に何か獣の耳のようなものが見えたのだ。










「あ、先輩そんなに慌ててどこいくのー?」


風呂場に猛ダッシュしていると、廊下でベルが興味津々に尋ねてきた。


だが今の俺にはそんなことに構ってる暇はない。


もしかしたらこの年でハゲるかもしれないからだ。


「あ、無視か・・・・・・・」


無視されたベルが突っかかってくるかと思ったら、


ベルは俺の頭を凝視して固まっていた。


まさか、もうハゲてきてるんじゃねぇだろうなぁ!?


「ゔお゙おい!冗談じゃねぇぞぉ!!」


やっと風呂場につき、乱れた呼吸を整えながら意を決して鏡を見て、


俺は暫く固まっていた。


「・・・」


ハゲてはいない。


が、なんだこれは・・・?


スクアーロは、自分の感情にあわせてピクピクと動くそれを見詰め、


そして触ってみた。


体温がある、引っ張っても取れない(つか、痛ぇ)。


あの小瓶に入っていた液体の正体は多分、コレだ。


「あ、スクアーロさっき・・・・」


そこへ追いついたが顔を覗かせ何かを言いそうになって、


小声で「やっぱり見間違いじゃなかった」と呟き俺の頭にはえている


猫の耳らしきものを触った。


「・・・まぁこれはこれで可愛いと思うよ」


「ゔお゙おい!可愛い可愛くねぇの問題じゃねぇ!!」


が哀れみの目をむけながらスクアーロの肩を叩くと、


さっきまで固まっていたスクアーロがはっと我に返り、叫んだ。


「どうすんだコレ!」


猫耳を指差し、に「今すぐ直せ」と目で訴えながら迫ると


困ったように


「んー・・だってそれ調合ミスした薬だしー・・・。」


と、かったるそうに答えたのだ。


「一応直す薬作ってみるから暫くそのままで我慢してよ」


「暫くってどれくらいだ・・・」


「もう一回同じ薬作って実験してそれからだから・・・」


頭の中で計算しているのか「うーん・・」と唸りながら首をかしげ、


ぱっと顔をあげて


「一ヶ月」


と笑顔で答えた。


「い・・・一ヶ月だとぉ・・・!?」


一ヶ月間俺はこんな恥ずかしい格好でいなきゃいけねぇのかぁ!?


「・・・ぐっとらっく!」


最後には聞きなれない単語をはなってから逃げるように自室に戻っていった。



このあと風邪が悪化し三日間寝込んだことは言うまでもない。