「壁にはりつけとけばいいんじゃね?」


「いや、前にテレビで見たぞぉ。忍者はなぁ、そういう拘束も簡単に抜け「マーモン、遊ぼうぜ」


語り始めたスクアーロの言葉を遮り、ベルは近くにいたマーモンを抱き上げてどこかへ行ってしまった。


「・・・人の話は最後まで聞けぇ・・」





トリップ オア リターンズ





、何してんの?」


母さんが俺の布団を引き剥がした。


「試験遅刻するでしょ!」


試験・・・?なんの試験だっけ?


「まだ寝ぼけてんの?今日は大事な・・・・の試験じゃない!」


え?何?よく聞こえなかった。もう一回言って。


上半身を起こして、聞き取れなかった部分を母に聞こうとしたら、そこには母の姿はなく、真っ暗な闇が広がっていた。


・・・あれ?





「どこだここぉ!」


「あ?見てわかんねぇのか。お前が忍術で飛んできたところだろうが。」


叫んだと同時に目が覚め、目の前にあったザンザスの顔に吃驚する。


そして、夢だったのか、と落胆した。


「なんだ・・・折角帰れたと思ったのに・・・夢オチってベタすぎるでしょ。」


こんなベタベタな展開ならこっちが夢であってほしかった。


は深い溜息をつくと、固くなった体を動きやすくしようと伸びをした。


「おい」


「はいはい、なんですかー?」


話しかけてきたザンザスに、適当に返事をすると、目の前に紙を差し出された。


「・・・なにこれ?」


それを手に取り目を通すと、知らない名前が真ん中にぽつんと書いてあった。


「仕事だ、いけ」


偉そうな態度で椅子に座り、頬杖をついてザンザスは俺に命令した。


「仕事・・・・?」


訳が解らないまま、紙を手に取り眺める。


もしかしたらあぶり出しの類かもしれない、と(何故か)持っていたライターで下からあぶってみる。


「スクアーロとベルが一緒だ。やってみねぇと慣れるもクソもねぇからな」


「・・・もしや・・暗殺とかではないですよね・・?」


椅子にふんぞり返るザンザスにおそるおそる聞いてみると、「そうだ」と即答された。


俺はあぶっていた紙に火をつけ、灰皿の中に捨てた。


「いや、俺暗殺とかマジ無理だし。つか一般人だし。一般人は暗殺とかやらないから」


「忍者は暗殺に最も適した職業だとどこかで聞いた」


だから忍者じゃないって・・・・もういいや。


「でも俺は殺しなんかやらn「いいからさっさといけ」


忍者、忍者じゃないはどうでもいいが、殺しだけは簡便してくれと抗議しようとしたら、その抗議の言葉を遮られ銃を乱射された。


多分これは脅しではなく本当に当てるつもりで撃っているんだろう。


だって、俺の靴を掠めたギリギリ足の肉に当たるか当たらないかのところに一発いれられたのだから。


きっと次に何か言葉を発しようものなら容赦なく俺はお陀仏だ。


「い・・・行ってきます」


そう言って俺はとぼとぼと部屋を後にした。







「あ、きた」


部屋からでると、長い廊下の少し先にベルとスクアーロが立っていた。


待ちくたびれたとでも言うような二人の視線に痛む胃を抑えて俺はのろのろと二人のもとへ向かった。


「ゔおい。とろとろしてるといくら忍者でも死ぬぞぉ」


ぽかっと一発頭を殴られたが、なんだか今は痛いのすら感じない気がする。


「ししっ」


そんな俺をよそにベルが俺の腕にしがみつき、スクアーロに言った。


「ばかじゃん先輩。忍者は不死身なんだぜ」


いや、いくら忍者でも死ぬだろう。


と言葉にだそうとしたが、このスクアーロもそこまで馬鹿でもあるまい、とちらりと見やると「そうなの!?」とでも言いたげな顔で俺を凝視していた。


わーお。本当にこの集団ばかばっかり。


「よし、とにかくそろそろ行くぞぉ」




スクアーロの言葉を聞き、俺は半分ベルに引っ張られて外へと出て行ったのだった。


(・・・帰りてぇ・・・)


と、思いながら。









end