誰もいない部屋。 つけっぱなしにされたテレビの画面に、笑顔で女性記者のインタビューを受ける男が映っていた。 「研究を始めたのは10年前からです。それがまさかここまでうまくいくだなんて思ってませんでした」 その男が、にこにこと笑うツインテールの女の子の肩に手を置き、女性記者に向かって言った。 「わが社が開発した『doll』は人間と同じように成長し、人間と同じように生活します。勿論食べ物だって食べるし感情だってある。」 得意げに語る男の隣で、ツインテールの女の子は差し出されたお菓子の包みを開き、口にいれて「おいしい」と笑顔で言ってみせた。 「ただ、どうしても作れなかったのは"痛覚"。どんな傷を負っても痛いとは感じないし、血もでません。しかしそれも、ある意味いいのかもしれませんがね。」 doll 「い゙てててててっ!!」 怪我をした部分に包帯を巻いていたら、突然スクアーロが声をあげた。 「!てめぇもうちょっと優しくできねぇのかぁ!?」 「・・・これでも優しくしたつもりなんだけど」 スクアーロがあげた声に吃驚して固まっていると、声を荒げて文句を言われた。 どうやら相当痛かったらしく、スクアーロの目が少しだけ潤んでいる。 「お前の馬鹿力に任せてたら傷が悪化しそうだぁ・・・」 そう言ってスクアーロは俺の手から包帯を取り上げてどこかへ行ってしまった。 「隙ありぃ〜」 後ろから新たな声が聞こえたかと思えば、俺の真横をナイフがかすめて壁に突き刺さった。 突然のことに吃驚し、そして勢いよく振り向いてナイフを投げた人物に向けて怒鳴る。 「危ないなぁ!あたってたらどうすんだよ」 「あ〜?今あたんなかった?」 頭に疑問符を浮かべながら首を傾げるベル。 「当たってたら痛いだろ。」 前髪が目にかかっているからよく見えないのだろう。 ベルには投げたナイフが俺に命中したように見えたらしい。 「お前、また先輩に怒られてただろ?」 にしし、と笑いながらばかにしてくるベルにむっとして、俺は無言のままその場から立ち去ろうとした。 「もしかしてスクアーロが怪我したの、お前のせい?」 扉をあけようとしている俺の後ろから声をかけてくるベル。 その問いに「ちがうよ」と答えて俺は自分の部屋に戻っていった。 「また派手にやったわねぇ〜」 腕の傷を見て、ルッスーリアが呟いた。 「またをかばったんでしょ?」 黙っている俺に、ルッスーリアは溜息まじりに言った。 俺はその言葉にぴくりと反応し、小声で「ちげぇ」と呟いて、半分独り言のように小さな声で言う。 「かばわれたんだぁ・・・」 しかしルッスーリアには聞こえていたようで、(サングラス越しでわからないが)目を丸くして「えぇ!?」と声をあげた。 「珍しいじゃない、ていうか初めてじゃない?にかばわれたなんて!」 驚きすぎておかしくなったのか、はたまた馬鹿にしているのか、ルッスーリアは「おほほ」と笑いながら怪我をしていないほうの肩をばしばし叩く。 「ゔお゙おい!他のやつには言うんじゃねぇぞぉ!!」 「わかったわよ。でもが言いふらしちゃったらおしまいだけどねん」 言い終わった後、「はい、おしまい」と包帯を巻き終わった俺の肩をつんと突いた。 そうか、後でにも口止めしとかねぇと。 「・・・ルッス」 「なあに?」 そういえば、が平気そうな顔をしていたので忘れていたが、あいつは俺をかばったときに相手からの一撃を背中にくらっていなかったか? 思い出したらいてもたってもいられず、包帯と、ルッスーリアを連れてのもとへと急いだ。 「ちょ、ちょっとちょっと!なんなのよー!?」 事情を説明していないルッスーリアは混乱していたが、俺はどうやらのことになると自分の都合も他人の都合もどうでもよくなるようだ。 「!!!」 勢いよくの部屋の扉を開くと、呑気にベットに転がって本を読んでいるところだった。 いきなりのことに目を丸くして「なに・・?」と恐る恐る聞いてきたが、俺はすばやくに近寄り上着を剥ぎ取った。 「いやーん!何してるのよスクちゃん!」 それに対してよりも先にルッスーリアが声をあげ、服を取られた本人は驚きすぎて硬直している。 しかし、服をめくって背中をみても傷ひとつないすべすべの肌だ。 「、お前怪我しなかったかぁ・・・?」 「し・・してないけど」 眉を潜めて問う俺に対し、まだ目を丸くしたがふるふると首を振る。 おかしい、こいつは確かに背中に一撃をくらっていたはずだ。 見間違いなはずがないし、第一服は破れていなかったか・・・? 「やーねスクちゃん。襲う口実ならもっとましなもの考えなさいよ!」 考えている俺の背中をばしっと叩いて、ルッスーリアはぶつぶつ文句を言いながらの部屋から出て行った。 「え・・・」 ルッスーリアの残していった言葉には顔を真っ赤にして俺から自分の服を取り返した。 「お・・俺なんともないよ」 素早く服を身に着けて言ってくる。 俺は やはり見間違いだったのか? とちらりとを見てから、 痛みなど感じていなさそうな顔に、見間違いを肯定してふっと顔を綻ばせる。 「悪かったな、お前が怪我したんじゃねぇかと思って慌てたぜ」 わしわしとの頭を撫でると、嬉しかったのか飛びつかれた。 「スクアーロ」と俺の名前を何回も繰り返し呼んで、俺と目が合ったところでから唇を重ねてきたのだった。 *あとがき 一月も終わりですね・・・。 時の流れが速すぎるような気がするよ・・。 09.01.31 滓 |