「危ないからここにいろぉ」


玄関の前で駄々をこねているそいつに、俺は言った。


「やだ、一緒に行く」


そしていつもこいつは、俺の心配など知ったことではない、と言わんばかりに拒否するのだ。






doll







任務にいくというスクアーロについて行こうとひっついていたら、「今回のは危ないから」と、止められた。


スクアーロだけならまだしもベルやルッスーリアまでいうのだ。


まぁボスはいつも邪魔だの足手まといだの言うが。


俺だってここに連れてこられてからただだらけて居たわけでは、全く、決して、ない。


「お前のへなちょこパンチじゃ無理だぁ」


へなちょこパンチとは失敬な。これでも真面目に鍛錬した結果がこれなのだからどうしようもないではないか、と言葉に出すのは面倒なので、頬を膨らまして訴えかける。


ちなみにへなちょこパンチというのは、俺がどんなにがんばっても剣や銃などは使えなかったので、これならばと得意の怪力をいかして、なんかこう・・・手にはめる固いやつをつけて戦っているのだ。


本当に怪力すぎて練習中何回か壁を壊したりしてザンザスに怒られた。


「いいから大人しくここで待ってろぉ!」


「・・・だって・・・だって・・」


声を荒げ始めたスクアーロに、これならどうだと泣き落としにかかってみる。


たいていはこれでなんでも許してくれるんだけどなー・・・。


「うっ・・・」


ほら、やっぱりあと一歩だ。


見えないようににやりと笑うと、俺は仕上げにかかろうと視線をスクアーロに向けようとして、聞こえてきたルッスーリアの声によって阻まれた。


、ケーキ焼いたんだけど食べる?」


「食べる」


いままで駄々を捏ねていたのが嘘のようにあっさりと、はケーキの誘惑に負けて玄関で唖然としているスクアーロをおいてリビングに消えていった。















「ししっ、20にもなって駄々こねてんなよ」


リビングにいくとすでにケーキを前にしたベルが座っていた。


あと、見間違いかと瞼がいたくまるまで目を擦ったが、同じくケーキを前にしたザンザスもいた。


「・・・うるさい・・」


フォークを手に取り、ぶすりと苺に突き刺す。


「先輩、この任務行ったら5日は帰ってこねーよ?」


茶化すように言うベルの言葉に引っかかるものがあった。


5日は戻らない?そんな話聞いていない。


だってスクアーロは「すぐ戻る」って言っていた。


「・・・」


ケーキを食べる手をとめ、暫く考え込んだあと、まだ玄関にスクアーロがいることを祈って、コートをはおりどたばたと出て行った。


「ベル、余計なこと言ってんな」


「ごめんボス」


足手まといが増える、と怖い顔をしながらも、内心少し心配しているザンザスであった。












「・・・・ロ・・・」


気のせいか?の声が聞こえたような。


と、後ろを振り返るとの顔が目の前にあったかと思えば、勢いよく衝突してきた。


いや、は抱きついたつもりなのだろう。


「やっぱ一緒にいく!」


ぎゅうーと力いっぱい抱きしめられ、任務に行く前に骨を折るかと思った。


それぐらいの力は強いのだ。


「さっきは諦めてたじゃねーか」


「5日も会えないのは嫌だ」


スクアーロの胸に顔を埋め、自分にできるめいっぱいの寂しそうな顔で訴えかけると、暫くして「死ぬなよぉ」と抱き返された。


その言葉に「死ぬもんか」と返して、俺とスクアーロは暫く抱き合っていた。
















*あとがき

目に涙たまってきました。

まだまだ頑張りますよ。

私は甘い話をかくんだっ


09.0126 滓