10年前、あいつ・・・を連れて帰ってきたのは、ただの気まぐれだった。





doll






「あ・・・悪魔・・め・・」


そう言って黒い服を着た男は雨の降る路上に倒れた。


「標的撃破〜」


ちょろいちょろい、と言って、ベルはナイフを指に引っ掛けてくるくると回した。


俺はそんなベルの足元に転がっている男を見つめていた。


男が持っていたスーツケース・・・


何故だかその中身が異様に気になった。


「先輩?・・・スクアーロ!」


ぼーっとスーツケースを見つめていると、ベルに声をかけられた。


俺ははっと我に返り、ベルの言葉に反応する。


「な・・なんだぁ?」


「なんだぁ?じゃねーし。王子先に帰るよ」


「あ・・あぁ」


どうやらベルはぼーっとしている俺など放置してさっさと帰りたいらしい。


きっとシャワーを浴びたいのだろう。自分より格下の相手の返り血を顔や手にあびてしまったから。


「じゃーね」


そう言ってベルはその場を去っていった。


取り残された俺は、ベルが完全に見えなくなってからスーツケースに手をのばした。


(いつもは気にならねぇのに・・・)


取り付けられた留め金を外し、中をあけると、


「・・・子供?」


スーツケースの中にはガムテープで手足を固定され、口を塞がれた10歳ほどの子供が納まっていた。


スーツケースから出してみると、どうやらそれは人形などではないようで、服越しに体温を感じる。


べりっと躊躇いなく口を塞ぐガムテープを剥がすと、痛かったのか子供は目をさました。


さらさらの黒い髪に、漆黒の瞳。


綺麗だ、と思った。


「・・・」


子供は俺を見つめて、数回瞬きをしたあと、ぱくぱくと口を開け閉めして何かを伝えたそうなふりを見せた。


「・・あ・・・あ・・・」


何かを伝えたくても、声がうまくだせないようで、断片的なことしか口にできないようだ。


「ゆっくりでいいぞぉ」


焦って話そうとする子供を宥め、ゆっくり喋らせようと試みる。


「・・・お・・」


「お?」


スクアーロの言葉を理解したのか、子供はゆっくりと自分の言いたい言葉を口にする。


「お母さん、どこ?」


一瞬頭の中が真っ白になった。


俺はこいつの母親の行方なんて知るはずがない。


返答ができずに困っていると、子供が入っていたスーツケースの中にメモのような紙が入っているのに気付いた。


『孤児、親無し』


必要最低限のことしか書かれていない短いメモだった。


要するに、こいつには親がいないということだろう。


「お前の母親、いねぇみたいだぞぉ・・・」


俺は特に隠しもせずに子供に言い放った。


子供は数秒俺を見つめた後、俯いて「そっか」とぼそりと呟いた。


それから暫くたって、俺も帰ろうと体の向きをかえて歩き出そうとすると、服の裾をつかまれそれを阻止される。


俺の服の裾を掴んだのは子供で、俯いていて表情は見えない。


「・・・一緒にくるかぁ?」


きっと置いていかれるのが寂しいのだろうと解釈し、そう申し出てみると、数秒してこくりと頭を縦に振った。










































「じゃあ言ってくるわねスクちゃん、


「さっさといけぇ」


任務にいくルッスーリアを見送って俺とは部屋に戻る。


、お前もうすぐ誕生日だろ」


「・・・うん」


俺の隣にいるは、いつものように言葉僅かにほとんど動作だけで返事をする。


10年前は黒かった髪も、俺と同じがいいといって銀色に染まっている。


しかし、目は変わらず黒いままだ。


「お前ももう20歳かぁ・・・」


しみじみと出会ったあの日を思い出していると、ぼそりと「おやじくさ・・・」と聞こえてきたので、を軽く小突いた。


「ほんとのこと・・・」


小突かれたところをさすりながら、は「三十路すぎのくせに・・・」と言葉を続けたが、それにはあえて聞こえないふりをし、値段の高いプレゼントをせがまれないうちに俺は寝た振りをしたのだった。













*あとがき

10年後が書きたかったんです。
私まだリボーンの知識が浅いので
口調が解ってませんが、そこは想像力にお任せします・・・。

自分が書いた作品みてておもったんですが、つくづく鮫贔屓だな・・と思います。


09.01.23 滓