むすっとした顔、思わず手に持っているフォークを、

思いっきり膨らましている頬に突き刺してやりたい気分だった。





ダズント ライク





俺の隣で不貞腐れているのは、ベル。

その理由は、ずっと前から今日一緒にでかける約束をしていたのに急に任務がはいったから。

俺はそんなベルを気にせず、機嫌直しのためにだされたと思われるケーキを頬張っていた。

いつもはふざけてケーキの取り合いをしてくるベルが大人しいと、なんだか調子が狂う。

しゅんとしながら黙々とケーキを食べていると、不意にベルが話しかけてきた。

は寂しくないんだ?」

その問いに一瞬動作を停止させ、また目の前のケーキに集中する。

そんな俺の態度にさらに機嫌を悪くしたらしく、ベルが俺にむけて

「無視するとその首切っちゃうよ?」

と、ナイフを突きつけてきた。

ちらりと首に突きつけられたナイフを一瞥した後、視線を戻す。

その瞬間、ナイフが少し首に食い込んで、血が流れた。

「いって」

吃驚して思わず仰け反ると、ベルがバカにしたように俺を見て笑っていた。

ムカっときて手に持っていたフォークで反撃を試みるが、さらりとかわされてしまった。

同じような年でも暗殺部隊の一員と普通の一般人では勝手が違う。

「・・・のやろー・・・」

しかし、そんな理由で諦めるのが癪でしかたなくてはふるふると震えた。

「あほっ!チビ!」

悔し紛れの捨て台詞を吐いて部屋からの逃走をはかったが、今のベルに暴言を吐いたら
ただではすまないようだ。

全速力で廊下を走るも、だんだんと距離が縮まっていく。

「ししっ、鬼ごっこ?」

楽しそう(?)に笑い、を追いかけるベル。

ベルとは逆に、楽しそうな様子など微塵も感じられない

「はえぇんだよ・・・!」

廊下の角を曲がったところすぐにあった誰かの部屋に飛び込んで
鍵を閉める。



「・・・なにしてんだぁ?

どうやらスクアーロの部屋だったようで、行き成り飛び込んできた俺に吃驚しているようだ。

しかしそれ以上に俺の心臓が大変なことになっている。

「こ・・殺される」

ズルズルへたり込むと、「は?」という状況を理解してないスクアーロの声が耳に入った。

〜?」

扉の前でベルが俺を呼ぶ。

まぁ当然でてはいかないけど。(てか、でてったら確実に殺される)

「なんだぁ?喧嘩でもしたのか?」

「まぁそんな感じ」

くだらねー、といった顔で見つめてくるスクアーロに、心の中で文句を言った後、

どうしようかと考え込む。


うーん、と唸っていると、ひょいと首根っこをつかまれ部屋の外に出される。

「え、ちょ・・・」

こいつ俺の話聞いてた?

今ベルに会ったらナイフで串刺しなんですけど。

「お前らの喧嘩に俺まで巻き込むんじゃねぇ」

溜息をつきながらスクアーロはベルの前に俺を放り投げた。

そしてスクアーロはさっさと自分の部屋に戻っていく。

(薄情者・・・!)

「・・・」

真正面に立ったベルが無言で見つめてくる。

いつナイフをぶっ刺されるのかと、俺は気が気でなかった。

不意にベルが手を伸ばしてきて、俺は反射的に目を瞑る。

くると思っていた痛みはなく、代わりにベルの笑い声が聞こえてきた

「ししっ、俺のが背高いし」

そう言った後、ポケットから絆創膏を取り出して俺の首に張ってくれた。

「じゃーね。俺仕事いくし」

「・・・うん」

やけにあっさり、ベルはその場から去っていく。

「すぐ帰ってくるし。寝ないで待っとけ」

多分後ろ姿のベルには見えてないだろうけど、俺は小さく頷いた。

ベルが出て行ったあと、俺は一人残された廊下で呟く。

「・・背高いのはブーツ履いてるからじゃないの・・・?」



結局ベルは何をしたかったんだろうか・・・。





end